神谷明

神谷さんは1970年から活躍されている大御所声優で第二次声優ブームの立役者の1人です。声優業界の歴史を語るにあたっては外せない人物であると言ってもいいでしょう。

代表的な役はキン肉マンのキン肉スグルや北斗の拳のケンシロウ、シティーハンター及びエンジェルハートの冴羽獠などその経歴に相応しいものばかり。アニメについて詳しくない人やある程度お年を召した方でもその美声に聞き覚えがある方は多いはずです。

特に冴羽獠役は1番のお気に入りで「ケンシロウのような二枚目の演技もキン肉スグルのような三枚目の演技も全て受け入れてくれる。」とおっしゃっており、自らが立ち上げられた個人事務所の名前としても使われています。

またゲッターロボシリーズの流竜馬や勇者ライディーンのひびき洸、闘将ダイモスの竜崎一矢といったロボットアニメの主人公の役に多く抜擢。必殺技を叫ぶセリフが多かったことから業界内の一部からは「叫びの神谷」と呼ばれるようになり、「ロボットアニメの主人公なら神谷明を使っておけ」という風潮もあったとか。

ご本人もその叫びのセリフには強いこだわりがありロボットもののアニメキャラが多数参加する人気ゲームでは「ゲームだから1番いい声を残したい」ということで、流竜馬の決め台詞である「ゲッタービーム!」を30回も言い直したことがあります。

他にはドカベンの里中智のような線の細い美少年役に、うる星やつらの面堂終太郎やめぞん一刻の三鷹瞬のようなナルシストな二枚目半の役。モーレツア太郎のニャロメのようなマスコットキャラや美少女戦士セーラームーンSの土萠創一のような怪しい悪役。

超時空要塞マクロスのロイ・フォッカーや名探偵コナンの毛利小五郎(初代)のような渋い役など、どんな役でもこなせる非常に芸達者な方です。

洋画吹き替えでも活躍されていてピアーズ・ブロスナンの吹き替えを専任で担当したほか、007やスターウォーズといった有名シリーズで主役の吹き替えを担当。

CMや番組のナレーションを務めることも多く、特に東京ドームシティアトラクションズ(旧名・後楽園ゆうえんち)のヒーローショーのCMナレーションを20年にも渡って担当されましたので聞き覚えがある方も多いと思います。

他にも有名ラジオ番組であるオールナイトニッポンで声優として初めてレギュラーパーソナリティーを務めたり、オレたちひょうきん族という伝説のバラエティ番組の1コーナーで司会を務めるなどその活躍は声優のみに留まらず多岐に渡っています。

若い人でも知っているような伝説級のキャラを持ち役にしている神谷さんですが、現役であるにも関わらず一部の役は後輩に譲っていたりもされています。

北斗の拳の後日を描いた作品やゲームやパチンコ台のケンシロウ役は複数の後輩声優が演じていますし、名探偵コナンの毛利小五郎役が2代目の小山力也さんに変わったときには突然のことだったので騒ぎになりました。

もちろんどれも思い入れのある役ですし実力が落ちたわけではないので神谷さんがそのまま演じたいのはやまやまではあるのですが、これらは番組の制作費の問題で仕方がないことだそうです。

声優の出演料というのは番組の制作費の中から出されるもので実際に出演した声優が手にする金額は所属する事務所のシステムによって微妙に違いますが、アニメ作品への出演においてはキャリアによって金額が変わってくる“ランク制”が適用されています。

そしてキャリアが高ければ高いほど出演料が高くなるのですが、神谷さんほどのキャリアや実力及び知名度がある方ならその出演料は一番高いランクのものになります。

よって「やりたい役だから自らが受け取る出演料を下げてもいいから出たい!」というようなことをしたら、その分他の出演者が受け取る出演料も下げることになってしまうので役を譲るようなことが出てきてしまうのですね。

声優界を最前線で引っ張ってきたからこそキャリアが上がってしまったわけですし、1980年代から声優の地位や収入の向上のために尽力された方ですので尚更無理に出演することが出来ないという事情もあります。

この問題は神谷さんだけに起こっていることではないですが、少なくても今の声優業界の出演料のシステムが変わらない限りはどうしても仕方のないことです。

しかしそれでも往年のファンや原作者からの「このキャラの声は神谷さんでなくてはならない!」という強い声はいつまで経っても健在で、予算が十分に確保されている作品では引き続き自らの持ち役を担当されていますよ。

私としても冴羽獠やキン肉スグルは神谷さんでなければ嫌なので、可能な限り演じていただきたいです。

また神谷明さんはテアトル・エコーという半世紀以上続いている大手の劇団出身で初代ルパン三世の山田康雄さんや初代銭形警部の納谷悟朗さん、名探偵ポワロの熊倉一雄さんの直属の後輩であり教え子であると自負されています。

冴羽獠も毛利小五郎もキン肉スグルもこのお三方の演技を参考にされたもので、その教えやずっと見てきた姿が今も神谷さんの演技の中に生きているのでしょう。

しかし3人の師匠の「声優は俳優という仕事の一部に過ぎない。」という価値観とは違い、神谷さんは「声優は専門的な職業である。」と独立した1つの職業として考えていらっしゃいます。

もちろんどちらが正解でどちらが間違いであるということはないのですが、それだけ声優という仕事を愛して誇りに思っていらっしゃるということですね。

その強く深い想いゆえに後進の育成にも尽力されていて専門学校の声優コースで長年に渡って教鞭を取られています。その中には新谷良子さんや清水愛さんなど既にプロとして活躍されている方もいらっしゃいますよ。

これからも前線で現役声優として後方で育成者として、長く続いていく声優業界を支え続けていかれることでしょう。声優業界にとってなくてはならない方ですので、いつまでも元気に活躍していただきたいと思います。