日髙のり子

日髙さんはタッチやとなりのトトロなどで知られる人気ベテラン声優で、普段アニメを見ないような人やご年配の方でも日髙さんの声を聞いたことがあるという人は多いでしょう。

代表作はタッチの浅倉南やサクラ大戦シリーズのエリカ・フォンティーヌのような正統派ヒロイン。トップをねらえ!のタカヤノリコやらんま1/2の天道あかね、となりのトトロの草壁サツキのような明るく元気いっぱいな少女の役に、名探偵コナンの世良真純のようなボーイッシュな少女の役。

炎の闘球児ドッジ弾平の一撃弾平やピーターパンの冒険のピーターパンのような活発な少年役に、ふしぎの海のナディアのジャン・ロック・ラルティーグや赤ずきんチャチャのしいねちゃんのような落ち着いた少年役。DEATH NOTEのニアや爆走兄弟レッツ&ゴーの一文字烈矢のようなクールな少年に、るろうに剣心の瀬田宗次郎のようなミステリアスな青年。

スイートプリキュアのアフロディテやONEPIECEのベルメールのような大人の女性に、犬夜叉の桔梗のような神秘的な女性の役にPSYCHO-PASSのドミネーターのような機械の声など様々な役をこなせる確かな実力者の方です。

上記のようにアニメやゲームでの出演が多い方ですが、洋画吹き替えではチャーリーとチョコレート工場やGleeシリーズで主要キャラクターの吹き替えを担当。特撮では烈車戦隊トッキュウジャーでグリッタ嬢の吹き替えを担当し、バラエティー番組やプラネタリウム番組のナレーションなども担当されています。

またラジオパーソナリティとしても活躍されていて、1980年代から現在に至るまで何本ものラジオ番組でメインパーソナリティとしてリスナーにメッセージを届けてくださっています。

特に文化放送のアナウンサーである長谷川のび太さんと一緒にメインパーソナリティを務めている「ノン子とのび太のアニメスクランブル」は1991年の番組開始からずっと続いていますし、その放送期間は首都圏のアニメラジオ番組の中では最長寿です。

その間1度もパーソナリティーの変更は行われていないのですが、25年も休まずに続けられているのだからとてもすごいですよね。更に歌唱力にも定評があるためアニメやゲームの主題歌を担当されたり、ライヴを行ったりもされました。

歳を重ねてもその澄んだ声に衰えはなく、それどころかますます活躍のフィールドが広がっていらっしゃいます。これからも日髙さんの活躍に目が離せないし、その人気はまた更に増していくことでしょう。

性格は明けっぴろで明るく、漫画家の島本和彦さんから「便所の100W(必要以上に明るいという意味)」と呼ばれたこともあるほど元気な方です。

ご本人曰く演じた役の中で1番自分に近いのはらんま1/2の天道あかねであかねと同じくお父様が空手道場の師範で自身も空手経験があり、2人の弟さんと取っ組み合いのケンカをよくされていたので「まるで男の子みたい。」と言われることもあったとか。

小さい頃から女優志望で子役として活動を始められ、高校生のときには“いとうのりこ”名義で「ふたごのモンチッチ」の主題歌を歌いキャンペーン活動のために日本中を飛び回ったこともありました。

その後ふたごのモンチッチを発売したレコード会社の勧めでアイドルに転向。特撮モノのドラマにレギュラー出演されたり音楽番組でグループ活動を行うなど、ある程度はアイドルとして名前を知ってもらうことが出来ましたが売れることが出来なくてご両親からは引退するようにと勧告されてしまいます。

そんな中ラジオ番組でリスナーから「声に特徴があるので声優が向いているのでは?」と言われたことで声優という職業を意識することになり、超時空騎団サザンクロスのムジカ・ノヴァ役で声優デビュー。

その翌年に伝説の野球アニメである「タッチ」で浅倉南役を担当したことで声優としての知名度が上がりました。しかしそれまでの演劇経験が皆無であったため、デビュー直後は酷評される日々が続きます。

そのためオーディションで不合格になることも多々あったのですが、事務所のスタッフが気を使って酷評されていることを日髙さんに伝えなかったためそのときはまだ自身の演技力の低さに自覚がなかったそうです。

タッチでも音響監督や先輩声優から毎回厳しい指導を受けていらしたのですが、あまりの演技力の低さに耐えかねた先輩で上杉達也役の三ツ矢雄二さんが「下手糞!もっと僕の事を好きになってよ!」と大激怒。

そのときの日髙さんの演技では南が達也を好きだということが全然伝わってこないから、「もっと伝わるような演技をしてくれよ!」ということですね。このときに激怒されてショックを受けてしまいますが、ここで初めて自身の実力を自覚します。

また日髙さんがひと言話すたびにフィルムが止まって巻き戻す作業をしたり戻している間に首脳陣が話し込んだりということがあったため、「自分が加わったために迷惑をかけてしまっている。」と肌で感じてプレッシャーに押し潰れそうだったそうです。

それでもこのときの厳しい環境と指導により短期間で演技力が向上。現在に至るまで声優として長く活動していけるようになりました。タッチ収録時の経験に関して日髙さんは「鍛えていただいて感謝しています。」と自身のエッセイで語られていますし、のちに新人時代の山口勝平さんへ演技指導をする際にその経験が活かされたとか。

ちなみに三ツ矢さんとはテレビ番組で共演されたり共同で事務所を設立されるなど非常に良好な関係を築かれていますし、山口さんは今でも日髙さんには頭が上がらないそうですよ。

タッチの放送が終了した翌年に「トップをねらえ!」と「となりのトトロ」で主演を担当し一般の人からもアニメファンからも高い評価を得て、「これで声優としてやっていけるかも!」と思われた日髙のり子さん。

しかしそのため「でもあれだけ大きな役がヒットしちゃうと大変だね。」と事務所のマネージャー達に言われるようになってしまいました。大きな役で大々的にヒットしてしまうと、“あの声優=このキャラの声の人”というイメージが固まってしまって他の役が取りにくくなってしまうことがあるんですよ。

なのでどうしたらいいか考えた結果、「それまでの自分は女の子役が多かった。」ということで男の子役にチャレンジをすることに。

その後ウェンディ役で「ピーターパンの冒険」のオーディションを受けた際に面と向かってお願いする勇気がなかったそうなのですれ違いざまに小声で言う形になってしまいましたが、すぐに音響監督の方に聞いてもらえることになりその結果ピーターパン役を務めることになりました。

これは自身に付きまとっていた浅倉南のイメージを振り払うためだったそうですが、初の少年役でプレッシャーや不安と戦いながら収録されていたそうです。

それによりときには苦しむことがあったそうですがウェンディ役の松井菜桜子さんやフック船長役の大塚周夫さんに助けてもらい、「精一杯の演技で返したい!」と緊張感を持ちながら演じ最後まで立派に務めあげることが出来ました。

その後も「ふしぎの海のナディア」ではピーターパンとは違うジャンの静かな演技に苦労しながらも青年役を演じられるようになり、「ドッジ弾平」では小仏珍念役の野沢雅子さんから少年役を演じる際の心構えや感情の出し方を学ぶなど演技の幅を着々と広げていかれます。

それらの困難を持ち前の明るさと不屈の精神で乗り越えてきたため、声優業界では「現場で叩き上げられた成功例」「努力で這い上がった苦労人」であると語られていますよ。これからも日髙さんはそのときの経験を活かして声優業界の未来を担う若い才能達をときに優しくときに厳しく導かれていくことでしょう。