野沢雅子

野沢さんはドラゴンボールシリーズの孫悟空やゲゲゲの鬼太郎(第1期及び2期)の鬼太郎そして銀河鉄道999の鉄郎など、どんな世代の人でも知っている役を演じられた“超”が何個も付くほど有名な大御所声優さんです。

声優業界創成期から活躍されている方でもあり、その頃から多くの作品で少年役を演じられてきました。当時は「少年役=女性」という現在では当たり前の風潮がなかったのですが、それを定着させたのが野沢さんだと言われています。

少年役以外ではワンピースのDr.くれはやふたりはプリキュアの雪城さなえなど中年女性や老婆の役も演じられており、その深い経験からくる渋い声と演技には思わず心が引き寄せられてしまいますよ。

特にドラゴンボールでは主役級のキャラクターを3役、映画やテレビスペシャルでのゲストキャラを合わせると6役も演じられています。1人が複数のキャラクターを演じる場合は1役ずつ別々に録音するのが基本ですが、野沢さんはそれをせずに担当キャラクターが同時に話す場面以外は瞬時に役を切り替えてそのまま収録に臨まれているんですよ。

役の切り替えは声の高低や抑揚などに変化を付けることで行うのですが、それぞれのキャラクターの生い立ちや性格を分析し特徴を捉え演じ分けるのは簡単なことではありません。その上収録を止めずにそのまま演じ通すなんて、プロでも難しいですよ。

あまりにも見事すぎるので困らせてやろうと思った映画版の脚本家さんが、野沢さんが担当しているキャラクター3人が会話するシーンをわざと増やしたことがあるそうです。でもそれにも関わらずケロリと何でもないことのように演じられたから逆に驚かされたし、共演者からも拍手喝采だったとか。

現在ドラゴンボールの新シリーズが放送されているのですが、主役級の3役の他に野沢さんが担当する新キャラクターが出てきました。もしかしたら今度は3キャラクターどころか4キャラクターでの会話があるのかもしれませんね、とても楽しみです。

ちなみに野沢さんが演じられている孫悟空は「声優が変わって欲しくないキャラランキング」の男性編で第1位で、原作者さんも「悟空の声は野沢さん以外有り得ない。」とおっしゃっているそうですよ。もちろん私も悟空の声は絶対に野沢さんでないと嫌なので、いつまでも悟空を演じていただきたいです。

そんな野沢雅子さんは声優業界創成期から活躍されていた他の声優さんと同じく、元々はドラマや舞台で活躍されていた俳優さんです。デビューが3歳のときで中学生のときから劇団に所属していたということなので、物心ついたときからずっと役者であると言ってもいいでしょう。

それ故に誰よりも芝居を愛し誰よりも芝居に厳しい方です。あらいぐまラスカルでラスカル役を射止めた際にはあらいぐまを理解するために10日間も動物園に通われるほど研究熱心ですし、戦闘シーンの収録の際には自身もポーズを取って演じているので足で踏ん張ったりしやすいようにパンツスタイルで臨まれています。

また新人時代は録音機材やアフレコ環境が整っていなかったため、誰かが間違えたら1番最初から取り直しだったそうです。その上生放送で声を当てることもあったのでNGを出さないように必死だったのにも関わらず、最近の若手が気軽にNGを出すため「緊張感が足りない。」と苦言を呈されることも少なくないとか。

さらに芝居というのは役者が1人変わるだけでも演出や演技を変更しなくてはならないので、突然の降板はもちろん体調不良による欠席だけでも自分以外の人全てに多大な労力を使わせてしまうものです。

声のみの演技だから別の日に収録しても大丈夫な声優ではなくお客さんの前で一発勝負の演技をする俳優出身だからこそ、「どんなことがあっても仕事に穴を開けるわけにはいかない。」という精神を誰よりも強くお持ちです。

体調が悪くても弱音を吐かないことは当たり前だし、もらい火で自宅が半焼した際にも近所の人に服を借りてスタジオに行ったほど。しかも火事のことは共演者どころかスタッフにも誰にもおっしゃらなかったそうです。

普通そんな大事件があってさらに原因が他人のせいとあっては心情的には仕事なんてやってられないし、誰かに愚痴を言いたいものですのに・・・。どんなことがあっても芝居に臨む姿勢を変えないタフさは常人では決して真似出来ません。