麻生美代子

麻生美代子さんの代表作といったら、サザエさんの磯野フネ役でしょう。日本に住んでいる人ならフネさんの優しく母の温かさに溢れた声を聞きながら日曜日を過ごすのが幼少の頃の定番で、大人になった現在でもそうだという人は大勢いるはずです。

2015年9月末にご高齢であることを考慮してフネ役をご卒業されたのですが、放映開始の1969年から46年間も務められました。初代フネ役としてそんなにも長い間演じて来られたのは簡単なことではありませんし、レギュラー声優陣の中でも最年長であったため収録現場を取り仕切る役目を担っていらしたそうです。

他の代表作はアルプスの少女ハイジのロッテンマイヤーさんやマリア様がみてるのシスター・上村のような厳しい大人の女性、らんま1/2のコロンや鋼の錬金術師のピナコ・ロックベルのような元気なおばあさんなど落ち着いた大人の演技で若い主人公達を諌めたり導く役柄を多く演じられました。

またその活躍の場はアニメやゲームだけに留まらず、洋画吹き替えも多数こなされています。代表作は赤毛のアンシリーズや刑事コロンボシリーズ、ディズニー映画の名作である眠れる森の美女など往年の名作に多数出演。ナレーションでも和風総本家やニュースステーション、家庭教師派遣会社のCMなどで活躍されました。

特に和風総本家や家庭教師派遣会社のCMでは現在90歳とご高齢にも関わらず今も現役で務められていらっしゃいますよ。日本のお茶の間に半世紀近くも温かい家族の姿を届けてきたその声は未だに褪せることがなく、これからも私達の耳と心に届けられるでしょう。

また麻生美代子さんの活躍の場は声優だけには留まりません。俳優としてテレビドラマや舞台演劇でもスポットライトを浴びられました。

魂萌え!やつばさといったNHKの連続ドラマに出演されましたし、あおげば尊しという映画ではテリー伊藤さん演じる主人公の母親役を熱演。舞台では声優仲間である鈴置洋孝さん主宰の劇団の舞台に多数出演し、劇団としての最終公演である「素晴らしきこの世界」では御年79歳にしてベテラン風俗嬢役を演じられました。

偶然縁あって私はこのときの舞台を拝見させていただいたのですがお年を感じさせないほど伸びやかな良い声をされていて、背筋をピンと伸ばして堂々と演じる姿はとてもカッコよかったです。

そんな麻生さんが俳優を志したのは学生のときでした。当時は戦争中でご本人も旧海軍で艦船及び航空機のための天体観測に従事され東京大空襲では被災されてしまいましたが、戦火と終戦後の激動を乗り越え舞台やテレビドラマで活躍。

1966年には魔法使いサリーにて声優として声のお仕事を始め、その3年後に磯野フネ役と運命の出会いを果たされました。趣味はシャンソンや油絵などジャンルを問わず多くお持ちで、特にスキューバダイビングは47歳から80歳までとかなり長く続けられたそうです。

好きなことや楽しいこと、興味があることがいっぱいで歳を取っているお暇がないのではないでしょうか。そしてこんなにエネルギッシュだからいくつ歳を重ねてもずっと現役でお芝居出来るのでしょうね。ぜひ見習いたいものです。